はじめに
FASへの転職が決まっている方から、FASで求められる能力についてご質問をいただきました。Querie.meで一度回答している内容とはなりますが、一部加筆修正したうえで、こちらでも公開いたします。
いただいたご質問
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回答
様々な考えがあると思いますが、私は下記4点だと考えています。詳細は後述します。
- 合理性の判断能力
- プレゼン能力(言語運用能力)
- 仕事のスピード感とクライアントへのコミット感
- 自走する能力
合理性の判断能力
監査法人では論点を正確に検討できているのか、またその検討は網羅的か?という点に主眼が置かれているように思います(もちろん監査においても合理性が重要な場面があることも否定しません)。
一方、FAS業務には様々な目的があり、その目的が達成されうる方法の中で最も効果的かつ効率的である合理的な方法を選択する必要が常に求められます。それは画一的に決まるものではなく、重要性の基準値のような明確に設定された指標もありません。また、当然ですが、前期調書のようなものもありません。
明確な判断軸や情報量が少ない中で、どの程度まで分析・情報収集するべきか、最終的にどのようなメッセージを伝えるべきなのかを合理的に判断し、それをもとに各関係者を納得させる能力が強く求められます。
プレゼン能力(言語運用能力)
監査業務において監査クライアントに提出する資料は、監査報告書・結果報告(マネジメントレター等)だと思いますが、監査が法定業務である場合その内容や形式も画一的なものになりがちな印象です。
一方、FAS業務では、レポーティングによってクライアントに資する情報提供を行いますので、その内容や形式は案件によって異なります(もちろん一定の型はあります)。 そのレポーティングにあたっては、何を伝えたいのか・何が大事なのかを意識する必要がありますが、特に下記で日本語運用能力が求められると理解しています。
- 端的に
- 誤解を与えないように
- 適切な温度感で伝達できるか
1、2については単純な日本語運用能力と気遣いに基づくものですので、ただただ鍛錬だと思います(ちなみに本稿はかなり冗長で日本語運用能力からかけ離れたものと理解いただいて構いません。無駄に長い。)
3については特に難しいポイントです(私もまだ自分の中に理論を構築できていません)。クライアントは専門家ではありませんので、(各専門家から)報告された内容が一体どの程度の重要性をはらむものなのかという点でコミュニケーションエラーが生じる可能性が非常に高いと思われます。
特に、「絶対に重要だとは言い切れないものの、無視できる軽微な内容とも言えない」みたいな論点がもっとも厄介です。それらを適切な温度感で表現できる言語運用能力がFASでは求められるかなと思います。※英語になったらもう確実に白旗です。
仕事のスピード感とクライアントへのコミットメント感
監査法人では年間スケジュールが大まかに決まっており、各業務に合わせて準備する期間が比較的長いと思います(まあここ最近はその準備期間すらタスクに追われて大変そうな印象ですが…)。
一方、FASでは年間スケジュールのようなものは決まっておらず、早い案件だと情報開示から数週間で中間報告のような案件も存在します(もちろんすべてではないです)。また業務によっては3日に1回クライアントに進捗報告して指針のすり合わせを行うような案件もあります(これはFDDではありませんが)。
そのような時間軸・スピード感で動いていきますので、後戻りも許されませんし、案件始まってから勉強しますのようなものが基本的に許されません。
そのため、スタッフ側としては、適切なタイミングで社内外とのコミュニケーションを取る意識は持っておく必要があります。プロマネ側としては、各メンバーの進捗と作業方針のズレが数時間でも発生してしまうと「うわ」となります(以前、社内限定でプロマネ業務みたいなことを経験しましたが、監査と勝手が全く違いました)。
また、その時間軸・必要なスピード感自体も、クライアントや対象会社の要望・回答状況によってかなり頻繁に変動する特徴がありますので、分析や調査の方針等はしつこすぎるくらいにすり合わせた方がよく、その意味でそれらの要望に柔軟に対応できる心構えとそれを支えるスキルが求められると思います。
自走する能力
スケジュール感的に監査よりスピード感が求められることはすでに記載した通りですが、その影響から、自分でなんとかする能力が監査よりは求められると思います。
分からないことがあっても、それを丁寧に教えてもらう時間は基本的にはありません。(「わからない?OK、じゃあそれは巻き取ります」と言われるのが大半です。たまにPJがそこまで忙しくない場合に教えてもらえるケースがあるという感じです。)
ですので、分からないことがあれば自分で調べて解決したり、PJが落ち着いたタイミングで隙を見て質問する等の能力が必要になります。 (余談ですが)そのため、私は監査にいた時よりはFASに転職してからのほうが業務外で勉強していることが増えました。あ、あと、中途なので気軽に聞ける同期が少ないという隠れた影響もある気がします。
おわりに
言語運用能力とクライアントへのコミットメント力が特にまだまだ不足していると実感していますので、継続して一定水準のレベルに達するよう励んでいきます。
また、こちらの回答が「監査法人を経ずにFASに入社する選択について」の参考にもなりそうな気がしています。迷われている方はぜひご覧いただけると嬉しいです(おわりにで記載しても意味ないか)
ご質問はこちらまで!!
